
五十嵐貴久の犯罪小説は面白い。遠野麻衣子最後の事件は、あんまり面白くは無かったけど。
韓国との日韓友好条約締結を控える8月15日の3日前に、現職総理大臣の孫娘誘拐。
いったい犯人は誰だ!ってのは、すぐにわかる。犯人側からの視点でも描かれているから。
小説を読み始めて、しばらくは警察がでてこないで、衝撃的な自殺から家族の崩壊からはじまる。
トキワ銀行から出向してきた役員に勤めていた会社のリストラを促進するよう命令され。秋月は、部長に任命される。
それにより多くの人をリストラしてきた。その中の1人が一家心中、その娘が秋月の娘の親友だった。
一家心中の責任は父親にある。秋月の娘はマンションから飛び降りて死んでしまう。
そして、秋月は会社を辞める。
結果的にそれが動機となる。
総理の孫娘の百合を誘拐した秋月孝介と元同僚の女。
誘拐方法は、意外と簡単で百合が通っている病院。車で待っている百合と祖母。祖母に電話をかけて、病院内に引き戻させて、ひとりになった百合を誘拐。総理私邸が見渡せる赤坂のマンスリーマンションへ。
「佐山百合を誘拐した。その事を警察に伝えて欲しい。」という電話を一般市民にかけまくる。
その中で、警察に連絡をしたものが少数いた。
それにより誘拐事件発生。捜査本部立ち上げ。しかし、警察は韓国大統領の警護で厳戒態勢。誘拐捜査の捜査員は数少ない。
警察へは電話もしない。日韓友好条約締結の中止、身代金30億円を車10台に3億円づつにして成田方面へ運べ。映画の少女の叫び声のMD、血のついた白いシャツ。
それらは、郵便ポストから投函。郵便局員に発見させる。
そのようにして、直接警察とは触れ合うことはしない。徹底した安全距離を保つ。
警察は、日韓友好条約反対の北朝鮮の犯行とにらみ捜査。
条約締結前に百合解放。
いったいなぜ??と思いながらも、無事に解放された百合に安堵。
条約締結。犯人捜査本格化。
しかし、なかなか進まない。
そんな中、星野警部は北朝鮮ではない素人の犯行だと推測。
理由は、条約締結前の人質解放、身代金には手をださない。
意味の無い人質、誘拐。この先に、何かが起こる。
すると、総理大臣夏休み前に「地方銀行の経営を抜本的に見直す必要がある。例えば、トキワ銀行など。」
それにより金融パニック。
トキワ銀行の取り付け騒ぎ。その他の銀行、市場全体へ波及。
それが秋月の目的。
続落するトキワ銀行株。それを退職金などで買い捲り。信用取引を利用して買いまくり。
そして、総理発言から一週間後。
総理は前言撤回。謝罪に謝罪のテレビ出演。それにより市場は安心感が広がり、週明けは、株価は急騰する。
そこで、トキワ銀行株を売る。
利益は約4億円。一部を一家心中したが、助かった娘の臓器移植のための資金として病院へ寄付。残りはユニセフへ寄付。
秋月は、その後、ぼんやりと過ごす。
誘拐のために動いていた半年間の緊張感から何もやる気がわいてきていなかった。
そこに、星野警部がやってくる。
警部は、トキワ銀行株を大量に売った人間を緊張に問い合わせ。
総理私邸に出入りする警察の動きを察知できる場所を洗い出し、その場所をしらみつぶしに調べ、契約者の名前と照合。
その結果、ひとりの老人が浮かび上がる。
老人宅へ確認に行くと、関係ない事がわかる。
マンスリーマンションの契約に使われていた免許証のコピー。その免許証が半年ほど前に盗まれていた事。その後、封筒に入れて贈られてきたこと。その封筒が残されていたことがわかる。
その封筒には自筆で、秋月孝介という名と住所がある。
それを頼りに、警察の総力を挙げて調べ。
遠野麻衣子最後の事件で、偶然の活躍をした戸井田が、これまた偶然にプラベートで遊びに行った場所で秋月を発見。
星野警部は言う。
誘拐で貴方を逮捕はできないだろう。それは、佐山百合が関わっているから。誘拐前の祖母への電話。車のロックの外からの開錠方法など。誘拐事件について裁判を行なうと、百合の関係がでてくるし、百合は秋月のために警察に出頭する可能性が高い。
総理大臣の孫娘の自作自演の誘拐を政府、警察はてだししないだろう。株価の風説の流布については、裁きを受ける必要がある。しかし、寄付にしか使用していないのだから罪もそれほど重くは無いだろう。
小説は終わる。
佐山総理は小泉と安部をモデルにしてるっぽい。格差があっても、頑張りで広がるなら仕方ないじゃないか。でも、お金がお金を生み出す仕組みの格差だから、それは違ってるんだ。そんな事を考えていた百合が秋月に声をかける。
退社のシーンで声をかけたのは、元同僚で事件の相棒の関口純子だと思ってたら佐山百合だったのか。
百合は、秋月の娘と一家心中で助かった娘と3人は親友関係だった。
秋月は、すごく頑張ってくれていた事を助かった娘に聞かされていた。だから、この人なら社会の痛みを知っている。
祖父の、金で買えないものないという考えを取り戻して欲しいと願っていた。
なかなかしっかりした中学生だ。そんな訳で、誘拐を自演した。
不思議なのは、なぜ秋月は免許証を送ったときに自筆で名前と住所を書いたのか。完全に安全地帯から犯罪に参加していたのに。
警察への電話も市民を通して伝えていたのに。ほんのわずかでも証拠は残さない。危険なら計画を中止する。そんな計画を実行していたのに。誘拐計画の初期段階だからミスした?でも、初期だからこそ慎重になるはず。中だるみでのミスならわかるけど。
彼は、捕まりたかったのか?だとしたら、警察に発見される可能性が極めて低すぎる。半年前の封筒を保存しておく人なんてほとんどいないから。たまたまその家の人が残しておく癖があっただけ。
その点をラストの会話で星野は指摘はしなかった。そこはさらりと流さないとけいないのかもしれないな。
警察は犯人に迫る必要があった。百合が犯人側だというラストを書く必要があった。だから、そんな初歩的なミスが必要だったという事なんだろうな。
それなら、そこはもっと警察の力を示す感じの捜査で秋月にたどり着いて欲しかったな。
まぁそんな事はあるけど、面白かった。
ちょっと、似たような説明の文章の繰り返しが多い感じがしたけど。
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